取材記事
GoodsPress 2002年8月号
mono事件簿
 
 「理髪店側の感覚だとカットがメインディッシュで肩もみとかはツマだったんですよ。でも、お客さんの中にはツマが好きな人もいます。店の方が忙しいと丁寧に肩をもんでくれなくてがっかりしたりする。お客さんが何をしに床屋に来ているのか。そこを間違えてしまうと、ヘアカットだけだったら美容院でもいいや、1000円の床屋でもいいやと思うようになってしまうし、男性エステに行くようにもなります」

そんな流れを断ち切るために、大野は日本橋本店をリニューアルした3年前から、基本メニューにトッピング感覚でエステメニューを加えられるようにした。
基本はシャンプー、カット、セット、ヒゲ剃りで30分で仕上がる。これが4000円。「サービスを低下させずになぜ30分にできたかというと無駄を省いた。整髪剤などを取りに行っていると時間がかかるので、全て椅子の近くに用意するようにしました」。個室以外でも椅子の周りに専用の棚を配置している。「ヒゲ剃りでも自分では剃れないところをサッとやってくれたら十分だというお客さんも結構いらっしゃる。そういう人は30分で仕上がることを喜んでくれます」
そうした基本メニュー以上を求める場合には、自在にサービスを足し算することができる。マッサージ、ハンドケア、フェイスケアなどを加えるとそれぞれが価格で2000円プラス、時間で15分プラスとなる。
「サラリーマンの方はすごく忙しいけど、外見を意識する必要もある。その両方に応えられるようにしました。カットはサッとでいいけど、フェイスケアを丁寧にやって欲しいという方もいらっしゃる。だから、その方の要望に合わせてサービスを組み立てましょうということです」
こうしたカット以外のメニューにも力を注ぐのは、実は本来の床屋の先祖帰りだと大野は言う。
「男のエステというのは新しいことではなくて、明治時代に西洋理髪が入ったころ、たとえば男向けのマニキュアとか美顔術が横浜の居留地でスタートしているんです。明治の元勲(げんくん)といわれている昔のお殿様たちが、そういうところに通った。うちも実は古い床屋で先代はそうした流れを汲んでいたんです」

明治は遠くなり、企業戦士達はいつしか身だしなみを忘れていた。彼らがそれを思い出すのなら、理髪店も原点に還ればよい。そうすれば男性エステに取られた客のある部分は取り返せると大野は考えている。男の身だしなみを巡って水面下で争奪戦が繰り広げられている。
  上:マニキュアや香水が並ぶヘアサロン大野・東京
   日本橋本店の店頭。
   エステメニューの充実ぶりから女性客も多い


下:ヘアサロン大野のエステティックサービスは個
   室でも受けられる。
   顧客のその日の体調に合わせたアロマがおだや
かに漂う空間だ。
  大野悦司(おおの・えつじ)
大野代表取締役社長
日本メンズサロンエステティック協会会長

(問)ヘアサロン大野・東京日本橋本店
03(3213)0458

 

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