聖書を見ると香料の使用は祭式に限られていたようにも思える。香料は本来神を喜ばせる樹液だった。宗教的・呪術的・薬用的などの用途があり、エジプトでは宗教的用途が多かったが、メソポタミアでは礼拝者を神に近づけるための香りとして斎戒や体を清めることに使われていた。有名なプラトンは香水嫌いで音楽と数学で精神を養うべきで、鼻よりは目や耳の方が役に立つといっている。
ギリシャ神話にはスミレがよく出てくるがアテナイは「スミレの花冠をつけた市」と呼ばれていた。ナポレオンの最初の妻ジョセフィーヌもスミレが好きで、ジョセフィーヌの場合はトレードマークだったから1814年に亡くなると、ナポレオンはその墓にスミレを植えて、セント・ヘレナ島に流される前に墓参りをして数本のスミレをロケットに納めたといわれる。スミレにはイオノンというにおい成分は、1,2分で復活するものの人の臭覚を麻痺させる。
ルイ15世の愛人のポンパドール夫人のお気に入りはヒヤシンスといわれるが、ヴィナスの美しさはヒヤシンスの露を飲んだためという言い伝えがある。
魚船での航海が長くなると、男同士のいさかいが出るが、港で女性に出会うことで気が静まるという。刑務所で女囚が騒ぐときは、塀の外を男性が歩いていることが多いという。鼻は昔は賞味期限をみつける道具だったのに、今ではシールになって鼻は役に立たなくなってしまった。
香料には植物性と動物性がある。500種類ほどの香料植物の中で良く使われるのは半分ほど。どんな花にも匂いがありそうだけれど香りの無いのが30%以上もあるのだ。匂が良いのは白い花で悪いのはオレンジ色の花のようだ。香料をとる動物は4種しかいない。麝香、霊猫香、海狸香、龍涎香であるが、クレオパトラが好みシーザーを虜にしたという高価な麝香を鹿を殺さずに取るようにとの毛沢東の命令で研究の結果、それが可能になった。
香料はいまはアロマテラピーの時代であるが、植物療法から分化した芳香療法をアロマテラピーとしたのはフランスの科学者ルネ・モーリス・ガットフォゼである。
アロマテラピーではキャリアオイルの中に精油を入れて使用するが、フランスやベルギーではエステティシャンがブレンドして使うことは許可されず、ブレンドしたものを使うように決められている。
アロマテラピーのブームが続いて香水の方は昔ほど騒がれない感じだが、フランスの香水産業は数百億フランの売上高を誇っている。ところで香水に著作権ってあるのだろうか。アメリカでは香水のコピーは「ノック・オフ」と呼ばれる合法的な行為で、クロマトグラフィーを分析して再生すればよく、ニセモノつくりではないのだ。高価で手に入れることができない香水に、似すぎるほど似た香りの香水がアメリカではスーパーマーケットで手に入れることができるのをご存じだろうか。香水の匂いが強すぎる人と弱すぎる人が多く、ちょうど良い匂いの人に出会うことが少ないのは、1滴の香水で匂いが弱すぎたとき倍の強さにするには、2滴ではなくて10滴が要るといった「香水の量と匂いの強さの関係」が難しいからなのかもしれない。