二歳にならないときからの習慣でありながらしゃべるということは難しいものだ。思っていることを一生巧く言えずに旅立ってしまう人も少なくないと思う。
客に接する仕事は、話術の巧さで成否が決まるから、話術のトレーニングが重視される。訓練はいわゆる標準語で行われるのだが、この標準語に問題ありで、アナウンサーにもどうかと思う人がいる。特に若いアナウンサーには多い。
日本語の基は兵庫県の明石周辺と、石川県の七尾周辺にしか残っていないと、かなり昔に聞いたことがあったが、その後の話では明石周辺のものも消えたということであったから今はどうなのであろう。
東京の言葉も標準語とは思えない。「し」と「ひ」の区別が出来ない。名優といわれた花柳章太郎然りである。
その点では富士の「じ」と藤の「じ」を自然に区別する土佐っ子はすごいと思う。
言語形成期というのは5、6歳から13、14歳までで、その間に育った地域の言葉が一生方言として身に付くというのは国立国語研究所の話である。
化粧がある、馬子にも衣装というが言葉だけはどうにもならない。借り物で済ますわけにはゆかない。平家討伐に手柄のあった木曽義沖が、いとこの義経に琵琶湖畔で討たれたのは都の殿上人たちの眉をひそめさせた、信州方言丸出しの無作法からだったと『平家物語』はいう。
フランス語と北京語を生活の場で耳にしながら、キレイと感じたことがあった。そのフランス語にも方言があるが、一番きれいなフランス語が話されるのはロワールの谷の中心のトゥールだと言われている。
男性でも女性でも初対面の人に会うときにはいつもそのひとがどんな声を出されるのだろうということに昔から興味?があった。
声というものは顔型と鼻の形、口の形に関係する。鼻の形が音声に関係するのは肺からの空気が鼻へぬける道と口に抜ける道にどう配分?されるかなのだが、顔の輪郭と「個声」の関係は難しく簡単ではない。
年配の方はよいとして若い方の声になると想像と違ってくる。特にギャル語を話す人だとかなりアクセントが違うので声に驚くことが少なくない。
日本語が壊れてきているが、よい日本語を耳にしたいと思うのは私だけではないだろう。これでも日本語?というものもある。なかにはなるほどと感心したり共感させられるものもあるが、日本語はどうなるのかと心配させられることがある。
「声紋」という生まれつきのものもあるが、誰でも発声次第で魅力的な言葉になれる、というのはヴォイストレーナーたちの意見である。俳優たちは早口言葉を喋ったり、歌舞伎の名セリフである「外郎売」でレッスンをしたりしている。
日本語は母音が5個しかなく子音+母音で作られる言葉なのに母音が消えそうなのが気になる。
ご精読ありがとうございました。この「ありがとうございます」は良く使う言葉だが、ア音で始まりア音が繰り返されるという日本語のなかでもきれいな響きを持つ言葉だから大いに使って戴きたいのである。