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「人生は99%の努力と1%のひらめきである」(発明王トマス・エジソン)
「叩けよ、さらば与えられん」(聖書)
「少年老い易く、学成り難し」(論語)
名言を集めた本はそれなりに便利で有用なものではあろうが、なかなか自分のものとしてしっくりこないことが多いのも事実である。結婚式における来賓祝辞で、「良き夫婦生活には三つの袋が大切です。まずは給料袋、次に堪忍袋、そして三つ目にお袋。ご両親を大切に・・・」と聞かされても、その場ではなるほどと思っても、すぐに忘れてしまうものである。ところが、何気ない時に、まさにこれだと思うような言葉に出会うことがある。私の場合は、少し時代的に昔の人たちが書いたものや話したものの中に、記憶に残る言葉に出会うことが多い。昔の偉い人が言ったから良い言葉だというわけではなく、昔のことだから私自身が知らないことが多く、かつ自分の側にその状況が備わってきた時に丁度出会うのだ。
「木配り」なる言葉には、ある時に出会った。私たちが良く使う「気配り」ではなく、「木配り」という所が面白い。その昔、大工の棟梁は、自分が扱う木について、十分な吟味が必要だった。それぞれの材木の特性に応じて、湿気に強く腐りにくい木は土台に、丈夫な木は柱に、見栄えのする木は床の間の床柱に、そして軽やかな木目のある木は天井に、とその使途を工夫した。そのことを称して、「木配り」と呼んだのである。
材木のそれぞれの特性を生かして組み立てた建物だからこそ生きてくる。全部が同じ材質の木だったら、建物全体としてはうまくいかないかもしれない。西岡常一さんは、法隆寺の修復作業を手掛けるなど宮大工の名人であったが、木が太陽のどちら向きに育ったかまで吟味した。それは、木の反り具合に影響し、ひいては建物全体に影響するからである。
あらためて考えてみると、気配り、目配り、心配りなど、「配る」に関連した言葉があることに気付く。「木配り」は、現代では使われていない言葉だが、組織ならば「適材適所」ということになる。組織を運営する立場の人たちは、せっかくの人材を十分に活かしているだろうか。うまいチーム編成になっているだろうか。私が「木配り」なる言葉を知ったのは、剣豪の宮本武蔵が400年近く昔に書いた『五輪書』の中であった。一つの言葉に出会い、言葉が持つ意味や重みを考えながら、人生を送ることも結構楽しいものである。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
