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私たちの居住の歴史を振り返ると、気がつくことがいくつか出てくる。約1年以上住んだ場合を居住歴に算入することにすれば、一生で何か所ぐらいに住んだことになるだろうか。私の場合を数えてみると、これまでに10か所程度にはなる。この世に生まれてからの実家での生活、留学時代の生活、結婚後に独立してからの生活、家族が増えてからの暮らし、海外での生活など、それぞれの人生段階があり、人生史と居住歴は連動している。
東京で生まれ育った私は、ある時東京から宮城県にある大学に転職した。そして宮城県から神奈川県内に立地の大学に着任したのは1990年4月のことだった。転勤に伴い、横浜市郊外の現在の住まいに住み始めてから30年が経過したことになる。人生史にとってはちょっとした長さの歴史である。毎日自宅付近を散歩するが、いろいろなことを見聞する。かつて企業の工場があった所は次第に変化していく。それらの土地は敷地も広く、新しい土地利用の形態としては集合住宅、研究所、配送センター、スーパーマーケットなどに変化した。栗畑だったところは集合住宅に、竹林だったところは戸建て住宅に、そして社宅だった所も戸建て住宅になった。小規模の小売店舗の業態変化も激しく、近所の豆腐屋が廃業し、酒店がコンビニエンス・ストアになり、現在は宅配便の事務所になっている。戸建て住宅の住人も、年々住み変わっていく。
近所といえば、意外にも身近な所に古墳があったことを思い出した。仙台では大学宿舎に住んでいたが、最初に住んだ宿舎は寺町にあったので、『海国兵談』で有名な林子平など著名人のお墓が多かった。林子平は、蟄居中に「親も無し 妻無し子無し版木無し 金も無けれど死にたくも無し」といい、六無斎と名乗ったという。宿舎隣りの寺には、伊達政宗の棺を焼いた灰からなる灰塚があった。二番目に住んだ大学宿舎は丘の上にあり、宿舎の隣りは公園で小さな円墳がいくつかあった。雪が降った際には子供と一緒にそり遊びをしたが、恰好の遊び場所であった。それは親子の楽しい思い出の一つになっている。
横浜市内の古墳は数少なくなったが、それでも現在12から15程度の古墳があるらしい。私の現在の住まい近く(かつての鎌倉郡に属す)にも前方後円墳(前方が四角で、後方が円形の形状)がある。2010年に測量調査が実施され、全長32m、後円部の直径約24m、後円部の高約4m、そして前方部の前端部幅約8m、前方部の高約1.5mの結果が得られている。築造年代は5世紀後半頃のものと推定されている。現在は公園になっているので、自由に見学できる。わざわざ古墳を見に行こうとする人は多くないので、独り占め状態でゆっくり散策が楽しめる。その古墳のふもとには神社があるが、守り神の役割を果たしているのだろう。その他近所の古墳から出土された勾玉や管玉などは、今では鎌倉の鶴岡八幡宮に収蔵されている。
人間が生きてゆく上で、仕事ばかりでなく、心身のゆとりをはかるバランス感覚も大事である。東京都内には500近くの古墳があるらしく、都心でも芝公園の古墳など、探せば結構見つかる。古墳が見つからなければ、富士信仰の人工の塚である富士塚(都内に50程度ある)や、有名人の墓などを目標にしても良い。住まいや勤務先の近くにある古墳などをあらかじめ探し出し、天気の良い昼休みや週末などの時間を利用して散歩すると、気分転換になり健康にもよいと思う。そして散歩中に気づいたことをきっかけにして、さらに探求心を働かせれば、歴史、地理、文化などの興味は尽きることがない。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
