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私にとって箱根は何度も訪ねている所なので、土地勘があり勝手は承知している。今回のお目当ては箱根の関所と畑宿の寄木細工を再訪し、芦ノ湖畔で昼食を楽しむことに限定した。車は西湘バイパスを通り、箱根湯本駅、温泉街を横目に順調に走り、有名な富士屋ホテルの所辺りからは、緑濃き箱根山中のドライヴと相成った。途中山越えの際は霧で見通しが悪かった。正月の箱根駅伝では、この同じ道を選手諸君は走るわけだから、実に大変である。芦ノ湖畔が見えてくると、見通しも大分よくなった。箱根関所近くの箱根恩賜公園前駐車場に到着。朝早かったからか、車も少ない。
箱根は小田原宿と三島宿の間にある宿場町。箱根の峠は、上り四里、下り四里なので、「箱根八里」と称されている。東海道最大の要地であるために、関所が置かれている。箱根と言えば箱根火山でできた所であり、温泉保養地として有名である。大涌谷はいまでも火山を実感できる場所で人気がある。食べると長生きするという名物の黒卵もなつかしいが、今回は立ち寄らないし、ロープウェイにも観光船にも乗らない。箱根は見所が沢山あるのだ。今見る芦ノ湖も箱根火山で爆発した所に水がたまってできた湖である。
杉並木を見上げながら歩いていくと、復元された箱根関所に到着。受付で入場券を支払い見学。検査する役目の人見女(髪改め女)が女を検査している模型がある。髪の中まで取り調べている。その後で、芦ノ湖畔を歩き、箱根関所資料館を見学した。古地図、関所手形などの文書、大名行列の模型などがあり臨場感がある。
たまたま私の家内の先祖が幕府鉄砲方の家来であり、幕末の慶應元(1865)年に、50名からなる一行を引率し、幕府の公用で江戸から大坂まで出かけたことがあった。これは将軍家茂の一行の、いわゆる長州征伐の先発隊としての役目だった(本欄2015年5月号の「過去が今になる時」を参照)。大名行列は単に復元模型に過ぎないが、身内に関係するとなると、見学も俄然熱が入る。「入り鉄砲に出女」という言葉があるが、箱根関所はまさにその言葉通りであったようだ。各施設すべてが興味深い。
次いで箱根神社を訪問したが、訪問客はそこそこの数いた。神社の杉木立が両側に聳え立ち、太くて立派である。曽我兄弟関連の解説文もあった。曽我兄弟は芝居や講談などでお馴染みであるが、この神社ゆかりの人物である。曽我五郎時致が幼時、この社の別当行実のもとで弟子として育てられたからである。
お腹も空いてきたので、予約してあったレストランで昼食をとる。野菜は地元産で、調理も給仕も一級である。すべて美味しくいただいた。私が興味を持つのは、食事以外ではレストランの立地場所の由来である。幸いにもホテルの由来を解説したパネルがきちんと掲示されていた。ここは、かつて大企業の企業家の社長が別荘として所有していた所であった。箱根には企業家の別荘が多く存在するので、調べると面白いことだろう。敷地も広大で、庭園の樹木も立派。花の季節は、さぞ混むだろうと思う。
食後は、甘酒茶屋や箱根資料館を横目に、次の訪問先である畑宿(はたじゅく)に向かう。畑宿は、江戸からの宿場である小田原宿と箱根宿の間にあるので、立場(たてば)、つまり休憩所に相当する。まずは、寄木会館と思い立ち寄った。ここならば、製作工程など、箱根名物の工芸品である寄木細工の基本がわかるので便利な所である。定休日はあらかじめチェック済で大丈夫のはずだったが、残念ながらこの日は臨時休館していた。コロナ禍のせいであろうか。
少し残念だったが、集落を散策する。「箱根八里は馬でも越えぬ」といわれるほど、箱根の山は険しい。石畳の旧東海道を実感し、復元された一里塚を見学。自らの足で感じ取ることが何よりも肝心である。ほとんどの店は閉まっていたが、開店している寄木細工店を発見し見学した。小箱、お盆、マウスパッドなどの小物を購入した。この小箱は、所有している古文書を入れるために必要であり、かねてより探していたものである。
ここで一休みして、お茶でも飲もうかと思っていたが、昼食でお腹が一杯だったので、早めに帰宅することにした。箱根は観光で持っている土地である。このご時世、観光産業従事者が大変な状況に直面していることを実感した。今回の小旅行は、箱根の自然の成り立ち、企業家の別荘形成、地場産業、街道文化、観光産業、等々をコロナ禍で見分することができ、結構複雑な気持ちと共に楽しみな一日ともなった。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
