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Men’s Life Style
金安 岩男

著者:金安 岩男
1947年2月に東京の下町に生まれる。
学部で経済学、大学院で地理学を学び、外資系情報企業、国立大学、私立大学での勤務経験を有し、研究、教育、研修などの各種プロジェクトを実施。地理学者として、計画実践、プロジェクト発想に取り組んでいる。海外諸都市の街歩き、相撲などを趣味に、発想のヒントをいつも探究中。社会的活動として、政府機関、地方自治体の各種審議会、委員会などの会長、委員などを務めている。
主な著書に、『時空間の構図』、『プロジェクト発想法』、その他多数。現在は、慶應義塾大学名誉教授、新宿自治創造研究所所長。

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体育の個人史
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10月は運動会や体育祭の季節である。教育の世界では、知育、徳育にならんで体育が重要であることは言うまでもない。体育の得意な人、不得手な人を問わず、体育については、どなたも個人的な経験がおありのことと思う。本格的な選手として、あるいは単純に楽しみとしての体育があることだろう。今回は、私自身と体育との関わりを振り返ってみた。

小学生時代の記憶をたどると、週末の野球、夏の水泳や相撲、冬のスキーなどが記憶に残る。野球は、仲間でチームを作り、隣の学校へ出かけての勝負であった。私は内野手で二番打者が多かった。スキーといえば、土曜の夜に夜行列車に上野駅で乗車して、越後湯沢などの上越のスキー場へよく出かけた。夜行列車の床にごろ寝するという強行軍は時間と費用の節約になったし、学校を休まずに済む。また近所の上級生と一緒に、自宅周辺から少し遠方の川の土手まで自転車で出かけることもあった。子供たちにとっては、自転車の旅も体育みたいなものだ。私は最下級生だったので、みんなについていくのが大変で、どうしても最後尾になってしまう。年上の人たちとの交流が自然に行われていた時代である。みんな、「〇〇ちゃん」と呼び合い仲もよかった。今から本名を思い出すのも難しい。

中学時代は、バレーボール部で人数が足りないので、加勢のためにチームに参加したことがあった。メンバーになってから数日後に試合があるといった具合で、よくも試合がやれたものだと思う。今の時代のように身長が高く、戦術をもとによく訓練された選手が多い時代には通用しないことだろう。私のポジションは、身長がそれほどなくても務まるセッターだった。トス上げの練習を沢山させられた。コーチ役は、元バレーボール選手だった体育の先生。夏の練習では、濃紺のランニングシャツの表面が、汗で塩が噴き出している状態だった。走り幅跳びの選手として、国立競技場での大会に参加したこともある。私が在籍した中学校に、元体操選手だった方が体育の先生として着任した。体操部を作りたかったが、作りそこなってしまった。これは残念だったが、今でも体操競技は好きである。

高校時代は、受験戦争の時代だったから、とくに部活生活をする余裕がなかった。しかし、昼休みなどは、中庭でバスケットボールやバレーボールに興じた。大学時代は、授業中に剣道があったり、シーズンスポーツを選択してスキーに行ったりもした。これはスキー部の選手が指導してくれた。これらの体育経験を通じて、結構いろいろな場所を直接経験した。列挙すると、蔵前国技館の土俵、国立競技場の走り幅跳びのピット、そして学習院女子大学のバレーコートなどが印象的である。

海外の話題といえば、米国留学時代には仲間とテニスに興じた。夏休み中などは、テニスコートはガラ空きだった。そして英国ケンブリッジ大学で客員として研究生活を送っていた時には、昼食時間が午後1時から2時なので、日本よりも1時間遅いことに気づいた。そこで学部の事務職員に、「なぜ講義が昼の1時まであるのですか」と質問したことがあった。答えは次の通りであった。「ケンブリッジ大学の伝統で、昔は午前中が講義で、午後が体育だったことに由来するようですよ」とのこと。今ならば、私たちが体得すべき「知」は、論理的な知ばかりでなく、経験知、身体知、関係知などの多様な知がある。だから、身体知をつくりだす体育を大切にすべきだ、と断言できる。

体育は、トレーニング、精神力、チームワーク、戦術など、ビジネスの世界で活用できることが多い。今の私はといえば、家の近所を散歩する程度で、身体を動かす機会もあまりない。情けない限りである。一方で、米国の大リーグ野球を始め、世界のスポーツ競技がテレビ中継やネット中継で楽しめるのだから、これはこれでまた夢みたいな話だ。日本の国技である相撲も、子供のころはラジオで十分楽しめた。心技体とよく言われるが、心は徳育、技は知育、そして体は体育と強い関係がある。学校ばかりか、職場で、地域で、そしてどこにおいても、心技体の充実をはかることは欠かせないとつくづく思う。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
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