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私は普段食べるものにあまり頓着しないが、世の中には味にうるさい御仁が結構多い。今回は、味に頓着しない人間による蕎麦談義である。
私が東北大学に勤務していた時のことになるが、東北大学農学部の先生の話が大変興味深く、面白かった。その先生の話は、年齢が増すと、なぜ蕎麦好きが増えるのかという話題だった。農学専門の先生の説は次の通りである。
子供の舌は敏感で、とくに苦味を感じる部分に強く反応する。よって、少しばかり苦みのある蕎麦は子供には好まれない。ところが、年を取るにつれて、その苦味を感じる舌の感覚が鈍くなる。そこで、舌が少し鈍くなった大人たちは、蕎麦を「美味い、美味い」と言って食すのである。蕎麦における鈍感力の効能といったらよいだろうか。この説明ならば、人間の生理的な性質ゆえのことだからなるほどだと思う。
蕎麦と言えば、「二八蕎麦」の由来が必ず話題に上るし、この話題を扱った書物も出版されている。二つの有力な説があり、二八は掛け算をすると十六だから十六文だという「値段説」、そして、二はつなぎの粉で八が蕎麦粉の割合であるという「割合説」の二つである。
私の手元には、西村重長と鈴木春信の画による『絵本江戸土産』なる復刻版の本があるが、原本は約二百五十年前の明和5年(1768)頃の刊行と推測されている。その中の「両国橋の納涼」の頁の「きりや」という名の店先に、「二六新そば」「うんどん」の置き看板と共に、出店には「二六にうめん」などの表示が見られる。ここでの二六は十二文の値段の新そばであり、そして十二文の値段のにうめんであることを意味している。つまり、掛け算を用いた値段説を裏付けている。
したがって、当時「二八」と言えば十六のことを意味したから、値段説の十六文でよいのではないかと私は思っている。ところが、時代により物価水準も変動するから、割合説が説明原理として重なって登場したようである。それもそうかなとも思うが、皆さんはどちらの説を支持されるだろうか。
老舗の蕎麦屋は趣きがあってよいのは勿論であるが、駅の立ち食い蕎麦も早くて安いので便利だ。蕎麦愛好の正統派からは邪道だとして非難されそうであるが、将来は野菜料理などを多く含んだ健康に配慮した蕎麦屋が多く登場するのではないかと私は予想している。伝統と革新の組み合わせということだが、さて蕎麦と蕎麦屋の将来はどうなるのだろうか。
ぞろぞろと蕎麦屋へはいる四十七
注)赤穂四十七士が討ち入りの夜に、楠屋十兵衛という蕎麦屋で勢ぞろいしたとされる。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
